好き好き大好き超愛してる。 / 舞城王太郎
「柿緒、誓うね。僕はもう一生、柿緒以外の女の子のことを誰も好きにならないから。絶対に」。たとえ心底言いたいことを本気で言っていたにしても、その言葉は耐え難く薄っぺらで、僕も、きっと柿緒もうんざりする。僕も柿緒もその誓いがやぶられるのを知っている。人間の生は記憶で縛られるような脆弱なものではないのだ。柿緒が、でも「私も」と言ってくれる。それは僕の無神経に対する厭味ではない。心優しい柿緒が、冗談じみた言葉を言って僕をフォローしてくれたのでもない。柿緒もまたその台詞を僕と同じく心底言いたくて本気で言ってくれているのだ。舞城なのに舞城らしくなく若い女性をターゲットにしているであろう装丁がまぁ毒々しい。まるで毒蛇が獲物を狙っているが如くだ。
そんな事は置いといて、作品について。内容はと言えば今腐るほど世の中にある「不治の病で苦しむ彼女との涙の純愛物語」に近い。癌に侵され、余命幾ばくもない柿緒との話をメインストーリーの「柿緒」として、サブストーリーに幾つかの短編を挟んだ形で構成されているのだが、これが中々混乱する。多少メインストーリーと関係のある話ならまだ良いが、ストーリー上では全く無関係と思われる話が急に出てきてはメインの柿緒に戻るのだから困る。一応サブストーリーの短編も恋愛をテーマにしている話で統一性はあるのだが、いかんせん急に神との戦争とか言われても訳が分からない。まぁ、そこが良いんだが(笑)
あとこの作品はどうやら「世界の中心で愛を叫ぶ」のアンチテーゼとして書かれているらしく(ソース未確認)死んでもずっと愛しているとか、忘れないとかは嘘だし、それが重荷になる事だってある。それに死にそうな相手に対して幾ら自分が分かろうとしてもそれは難しい事だとズバリ断言しまっている所が面白い。普通なら綺麗事を並び立てて終わりだがそれを否定し、尚且つ自分の愛に対する考えを表現している所もまた良い。
ただ僕が舞城に期待しているのはもっと突き進んだ表現と勢いだったので少し残念に思った部分もある。良い作品だとは思うが。むしろ今まで舞城の作品を読んだ事が無い人が読むには入りやすいかもね。この装丁も悪くないって事か(笑)
☆☆☆☆☆☆☆★★★ 7点


4.5
5.0






